5月24日は、上杉昇の声が90年代J-POPの輪郭を広げた時代を聴き返したい

5月24日は、90年代J-POPが売上の大きさだけでなく、声の陰影や言葉の質感でも記憶される時代だったことを思い出したくなる日だ。上杉昇はWANDSの初代ボーカルとして、そのど真ん中に立ちながら、後年の活動まで一貫してロックの衝動を抱え続けた。
5月24日は、上杉昇の誕生日からWANDSの時代をたどりたい
上杉昇は1972年5月24日生まれ。1991年にWANDSを結成し、1991年から1996年にかけて同バンドのボーカルとして活動した。のちに本人も語っているように、もともとはハードロックやヘヴィメタル志向を持ちながらデビューしたが、WANDSではビーイング系J-POPの洗練されたポップネスと向き合うことになる。その張りつめた声と少し影を帯びた歌い方は、「もっと強く抱きしめたなら」「時の扉」「世界が終るまでは…」のような代表曲に独特の切実さを与えた。5月24日は、90年代のメインストリームの中で異物感すら魅力に変えていた歌声を振り返るのにふさわしい日だ。
J-POPの大衆性とロックのざらつきを、同じ声の中で鳴らした
上杉昇の面白さは、単にヒット曲を歌った人というだけでは終わらないところにある。WANDS在籍期にはシングル11枚、オリジナルアルバム4枚を発表し、その後はal.ni.co、猫騙、ソロへと進みながら、よりオルタナティブで内省的な表現へ比重を移していった。つまり彼の軌跡は、90年代J-POPの巨大な商業空間から、もっと個人的でざらついたロック表現へ抜けていく流れそのものでもある。ポップスの器に収まりきらない感情が、むしろ多くのリスナーを惹きつけたという点で、上杉昇は日本のメジャー音楽史の中でもかなり特異な存在だったと言っていい。
今日聴くなら
今日はまずWANDSの「時の扉」や「世界が終るまでは…」を聴いて、90年代J-POPのスケール感の中で彼の声がどう前に出ていたかを確かめたい。そのうえでal.ni.coや近年のソロ音源に進むと、同じボーカリストの中にあったロックへの執着や言葉の鋭さが、別の輪郭で見えてくるはずだ。5月24日は、上杉昇の誕生日をきっかけに、ヒットの歴史だけでは拾いきれない日本のポップ/ロックの揺れ方を聴き直したい。