4月23日は、酒場の情景を歌に刻んだ河島英五の誕生日を振り返る

4月23日は、酒場の情景を歌に刻んだ河島英五の誕生日を振り返る

4月23日は、シンガーソングライター河島英五の誕生日。豪快な歌い手という印象だけで語られがちだが、彼の魅力は、酒場や旅先で交わされる会話の温度をそのまま歌に移し替えるような、人間くさい筆致にあった。流行の中心にいなくても長く歌い継がれる歌があることを、日本のポップスに証明した存在でもある。

「酒と泪と男と女」で広く知られた、等身大の語り部

河島英五は1952年4月23日生まれ。1970年代から音楽活動を始め、バンドやソロを経て、1980年に発表した「酒と泪と男と女」で大きな知名度を獲得した。この曲はヒットチャート上の数字以上に、居酒屋やカラオケ、テレビの歌番組を通じて広く浸透し、“うまく生きられない大人の本音”を歌う楽曲として定着していく。肩肘を張らない言葉づかいと、聴き手の生活にそのまま入り込むメロディは、フォークとも歌謡曲とも言い切れない独自の立ち位置をつくった。河島の歌は、格好よさよりも体温を優先した日本語ポップスの系譜として今振り返っても面白い。

酒場、旅、人情――日本のシンガーソングライター像を広げた

河島英五の重要さは、一曲の代表作だけでは終わらないところにある。酒場でのやり取り、土地の匂い、人生の回り道といった題材を、説教くさくならずに歌へ落とし込む手つきは独特だった。テレビ的な華やかさとは別の場所で支持を集め、ライブや地方公演を通じてじわじわ聴き手を増やしていった点も含め、彼は“全国区のスター”とは異なる形で日本の音楽文化を支えた人物だと言える。酒を歌っても単なる陽気さに流れず、弱さや寂しさ、どうしようもなさまで引き受ける。そのバランス感覚があったからこそ、後の世代が歌う“生活の歌”“大人の歌”の土台のひとつになった。

今日聴くなら

今日聴くなら、まずはやはり「酒と泪と男と女」から入りたい。河島英五の声の太さと、言葉を少し転がすように置いていく歌い方の魅力がよくわかる。そのうえで「時代おくれ」に進むと、見栄や不器用さを抱えたまま生きる人へのまなざしが、彼の歌の芯にあることが見えてくる。4月23日は、派手な成功譚ではなく、生活の現場に寄り添う歌が日本の音楽史にどう根を張ってきたかを聴き直す日にちょうどいい。