3月14日は、五木ひろしの誕生日から歌謡曲と演歌の越境をたどる

3月14日は、五木ひろしの誕生日。歌謡曲と演歌の境界がいまよりずっとしなやかだった時代、その両方の文脈で長く第一線を走り続けた存在をたどると、日本の大衆音楽が持っていた幅の広さがよく見えてくる。
3月14日に生まれた五木ひろしという存在
五木ひろしは1948年3月14日、福井県生まれの歌手。1960年代後半から活動を始め、1971年の「よこはま・たそがれ」で大きな成功を収めた。その後も「夜空」「千曲川」「契り」などの代表曲を重ね、長年にわたり日本の歌謡界を支えてきた。演歌のスターとして語られることが多い一方で、初期のヒット曲群を聴くと、都市的なムード歌謡や歌謡ポップスに近い手触りも強い。だからこそ五木ひろしの誕生日は、演歌という一語では括り切れない日本の大衆歌謡の広がりを聴き直すきっかけになる。
歌謡曲と演歌のあいだを行き来したヒット曲の強さ
「よこはま・たそがれ」は1971年の大ヒットで、港町の情景と失恋の余韻を濃く描きながら、メロディ運びには歌謡曲らしい親しみやすさがある。その後の「夜空」や「千曲川」では、より演歌的な情感とスケール感が強まり、1982年の「契り」は日本レコード大賞も受賞した。五木ひろしの歩みの面白さは、単にヒットを連ねたことだけではない。高度成長期以後の日本で、大衆音楽がテレビ、レコード、カラオケ文化と結びつきながら広がっていく過程で、歌謡曲の開放性と演歌の持続力の両方を一人の歌手が背負っていたところにある。
今日聴くなら
今日まず聴きたいのは「よこはま・たそがれ」。五木ひろしの名が全国区になった決定打であり、歌謡曲としての耳なじみの良さと情景描写の巧さがよくわかる。もう一曲選ぶなら「契り」。円熟した歌唱と演歌ならではのドラマ性が結びついた代表作で、1980年代の大衆歌謡が持っていた強度を実感できる。3月14日は、五木ひろしの誕生日を入り口に、歌謡曲と演歌が地続きだった時代の豊かさを味わいたい。